2020年VRライブ配信の始め方ガイド

2020年は5G(第5世代移動通信システム)の開始や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などにより、無観客試合が一般化しました。VRライブ配信を開始する事業者も増えています。VRライブストリーミング配信の始め方をご紹介いたします。

VRライブ配信を一度も経験が無い人は、まずコンシューマ向けVRカメラ(RICOH THETA、Insta360、GoProMax、Qoocam etcなどAmazon等で購入できるVRカメラ)で、VRライブ配信を実施してみるのが良いでしょう。仕組みが理解できます。

コンシューマ向けVRカメラを利用して画質、解像度、長時間動作、機能、安定性、視聴など各種運用に問題を感じたり、商用としてVRライブ配信を考える場合には、業務用の機材導入が必要となります。

VRライブ配信の大きな流れは、広角なカメラで撮影した映像をエクイレクタングラー形式やVR180形式にリアルタイムで変換します。4Kまたは8Kの映像をエンコードして、データを配信サーバに送ります。配信サーバからVR視聴端末に映像を送り視聴する仕組みです。

従来のライブ配信(非VR)と異なる部分は、リアルタイムでステッチ処理を行うことと、VRを視聴するための装置や再生システムが必要になることです。VRライブストリーミング配信を準備する際には、この部分が課題となります。

・カメラ

・リアルタイムステッチ処理(エクイレクタングラー形式やVR180形式)

・エンコーダー(ストリーム)

・配信サーバ

・VR視聴端末や再生システム

VRカメラの選定を行う前に、考えを整理するガイドを以下に作成いたしました。どのようなVRライブ配信が必要なのかご参考ください。

ジュエ株式会社では、エンタープライズ向けの各種ライブ配信用VRカメラやリアルタイム処理・低遅延配信システム、特殊なVR視聴端末や再生システムの開発販売を行っております。VRライブ配信に関しましてお気軽にご相談ください。

 

VRライブ配信は、360度か180度か

VRで見せたいライブ配信映像は、360°(つまり全方位)必要か、180°(前方のみ)必要かを考えます。例えばステージや会場等であれば、180°で十分です。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)でVR映像の視聴する人は、ほとんど正面しか見ません。

人体の構造的にも静止した状態で、真後ろを見るには、強い動機が必要です。体をひねっても見たいコンテンツがあるならば360°が良いでしょう。

当然ですが360°の場合は、周囲にいる一般の参加者や無関係の人まで映り込みます。状況に応じて、スタッフも隠れる必要があります。360°映像の後ろをロゴや色で隠すこともできますが、それならば180°でも良いでしょう。

180°なら不要なものをカメラの後ろ側に配置できます。壁、スタッフ、照明、一般の参加者等をカメラの後ろ側に配置することで、不要な映り込みの対策が不要になります。実用性では180°が優れています。

 

コンテンツは、2Dか3Dか

次に2Dか3Dについて考えます。2Dとは立体感がない映像です。モノラルとも言います。3Dは2台以上のカメラユニットから得られる視差を利用することで、映像を立体的にみることができます。立体視・ステレオとも言います。

人間の瞳孔間距離(PD・左目と右目の距離)と同じです。標準的な瞳孔間距離なら約5mまでは、映像に立体感を感じることができます。見せたいコンテンツが5m以内にあれば3Dにすることで、よりリアルに視聴できます。

没入感を高めるには、3Dが最適な選択です。例えば空など手前に物が無く5m以上の先の景色を見せたい場合は2Dでも3Dでも違いは、少ないかもしれません。遠方の場合でも手前に物があれば、対比となり立体感が生まれます。

180°を選択した場合にはVR180というフォーマットを利用します。VR180は3Dが基本です。180°の場合は基本的に3Dとなります。特殊な制限(180°だがカメラを2台設置できない)がある場合には、180°2Dという選択も可能です。

360°を選択した場合には、2Dか3Dを検討します。3Dを視聴する場合は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やハコスコ等の装置が必要です。タブレットやモニター等による視聴がメインの場合は、2Dで十分でしょう。3Dは必要ありません。

VRの3D豆知識

3Dの場合は、2Dの2倍のデータが必要になります。例えば4K360°2D(モノラル)3840×1920ピクセルの映像を4K360°3D(立体視ステレオ)にした場合には、3840×3840ピクセルになります。映像のサイズが大きくなります。左右の映像が上下にならぶトップ&ボトムという方式が一般的です。

VR180の場合は、180°分の映像のみを扱います。軽量なフォーマットであり、360°の半分の映像サイズに収まります。4K180°3Dは2倍のサイズになりますが、1920×1920ピクセルが横に2つ並ぶサイドバイサイド方式となり、3840×1920ピクセルで扱うことができます。180°は3Dでも扱いやすいサイズです。一般的な4Kに近いサイズとなり、さまざまな処理で扱いやすいメリットがあります。

 

解像度とフレームレートの選択

通常のライブ配信(VRではない)は、FHD(1920×1080ピクセル)あれば十分です。例えばYoutube、Facebook、netflixでも多くの人は、FHD以下で視聴(ライブ配信ではありませんが)しているでしょう。

8K(7680×4320ピクセル)などの解像度は、家電量販や放送局のロビーへ行かなければ見かけません。また100インチクラスのモニターで視聴しなければ、4K(3840×2160ピクセル)との違いも分かりません。

市場の一般的な映像機材は、FHD~4Kへの対応が標準的です。4Kでもコンシューマ向けは4K30fps対応が多い状況です。

一方でVRは、最低でも4Kは必要です。なぜならエクイレクタングラーに変換した360°映像の一部分(一方向)を視聴するからです。可能であれば8K欲しいところです。解像度だけ見れば16Kあっても有効でしょう。

1秒を何枚の画像で表現するか表した数字をフレームレート(fps)といいます。まだまだ30fps(1秒に30枚)が標準的です。60fpsになると動きが滑らかになります。4K60fpsになると対応機材がハイエンドや業務用になります。

4K30fpsの解像度を選択すれば、コンシューマ向けでも対応機器が多いことから、各種準備のハードルが下がります。放送機材に覚えがあり、予算や運用が可能であるならば、4K60fps以上を検討することで品質の差別化できます。

VRでは、8Kが欲しいところですが8Kクラスになると、規格や機材にさまざまな上限が発生します。8Kで撮影できるカメラ、8Kを扱えるフォーマット、回線、配信サーバ、エンコード、デコード、8Kを視聴できるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)も限られます。視聴者側の回線の速度も常時100Mbps以上は必要になり4G LTEの回線では厳しく、5Gもしくは光等の固定回線が必須です。現状では収録したものを視聴するケースが多くなります。

予算小

4K30fps-最小でスタートしたい
4K60fps-普及している実用的な規格でかつ高品質を目指したい
8K30fps-品質を管理できる固定設備等で視聴体験をさせたい
8K60fps-研究・開発を含め最先端なライブ配信を準備したい

予算大

予算や用途に応じて、4K30fps、4K60fps、8K30fps、8K60fpsを検討しましょう。2020年5月時点では、8Kにおけるライブ配信は、誰もが見れる状況ではありません。そのため4Kのライブ配信に加えて、整った環境(隣接する会場等)でのみ8K視聴とするなどや、8Kの同時収録を行いアーカイブは8K対応のライブ配信とすることもできるでしょう。

※VRの世界は数年で技術が大きく変わります。例えば2020年5月には、5G対応8K360°VRライブ配信カメラ「QooCam 8KEnterprise」が発表されました。
https://jouer.co.jp/news/qoocam-8k-enterprise/

 

VRフォーマットへのリアルタイム変換

VRで視聴するためには、エクイレクタングラ形式に変換する必要があります。ステッチと呼ぶ作業です。エクイレクタングラ形式とは、球体に映像を貼り付け、球の中心から見た場合に、正しい比率で見えるように映像を調整した形式です。

ライブ配信の場合は、カメラ映像をリアルタイムで、どのようにVRフォーマットへ変換するかが課題になります。VRカメラメーカが提供している一体型VRカメラを利用すれば、比較的簡単にエクイレクタングラ形式へ変換できます。

しかしカメラの機能的な制限や、メーカが提供しているソフトウェア仕様に合わせて、ライブ配信全体を運用する必要があります。配信や安定性を含めてVRカメラメーカに依存する傾向が生まれます。

一方で汎用的なリアルタイムステッチが可能なソフトウェアやハードウェアを採用すれば、一つのVRカメラメーカに依存せずに柔軟なVRライブ配信を設計できます。費用に関しては高額になりますが、必要に応じてカメラを変えられることもメリットです。

放送機器としてVR機材を準備できる場合は、VRメーカに依存しないVRライブ配信システムを構築することが強みとなるでしょう。ジュエ株式会社では、汎用的なリアルタイム3D立体視360度/180度VRライブ配信システムを提供しています。
https://jouer.co.jp/distinations/360-180-live-streaming/

ユーザーの視聴方法

VRライブ配信を顧客にどのように視聴させるか。これは大きな課題です。誰でも広く視聴させるには、パソコンやスマートフォンにて、何も装着せずにそのままの視聴が理想的です。

しかし3Dの表示できません。マウスやタッチ操作やジャイロで、視聴方向は選べるものの没入感も少なくVRである必要性も減少します。

3Dで表示させるためには、HMDもしくはハコスコ系(スマートフォンをHMD化するアクセサリ)をスマートフォンに装着させる必要があります。HMD等の装着は視聴するまでが大変です。

装置の入手やアプリケーションの実行など、ユーザーが視聴するためには、多くのサポートが必要になります。すべての端末ですべてのユーザーが2Dと3Dで自由に視聴できることが理想ですが、まずはコンセプトに最適な主要のデバイスから対応してゆくことになるでしょう。

・パソコンモニター・タブレット(そのまま視聴、2D)
・スマートフォン(そのまま視聴、2D)
・スマートフォン(ハコスコ等で視聴、2D/3D対応)
・HMD(2D/3D対応)

 

目的やプラットフォームと技術

プロモーション・宣伝を目的とした場合には、誰でも視聴できるように何も制限をかけずにブラウザ上で展開するのがシンプルです。一般的な360°形式であればYoutubeなど、無料のVRライブ配信を利用できます。Youtubeであれば配信サーバーも悩む必要がありません。

高速なネットワークやアプリの準備が可能であれば、HMDやハコスコ等にて管理した状態で、来場者など特定のユーザーに2Dや3DのVRライブ配信を視聴させることができます。イベント等で多いケースです。

事業としてプラットフォームや収益化を考えている場合は、会員と課金システムを備えた独自のプラットフォームを構築しつつ、2D・3D含めて各種デバイスに対応してゆく方向性になるでしょう。

もし配信サーバやアプリ等の開発に関する技術や知識・依頼先が無い場合は、自社でプラットフォームを用意することは困難です。そのような場合は、各社から提供されているVRプラットフォームやVRライブ配信サービスを利用することになります。そのようなサービスを利用することで、配信サーバや視聴アプリの問題はクリアになりますが、配信が依存することに加えて機能やシステム構成など自由な選択が難しくなります。

もし配信サーバやアプリが開発できるならば、独自のVRライブ配信システムを構築して、柔軟な機能やシステム構成でVRライブ配信が可能になります。VRカメラ機材及び配信機材周りは、ジュエ株式会社へご相談ください。会場にて設置や運営もサポートしています。

低遅延VRライブ配信システムは、医療や開発・産業系に最適

VRライブ配信は、Real Time Messaging Protocol (RTMP)+HLSが主に使用されます。コンサートやミュージックなど、多数の人が多様なデバイスで視聴するのに最適な方式です。低遅延であることより、映像の品質や安定性が重視されるでしょう。これらのプロトコロは、30秒から60秒程度の映像の遅延が発生します。

一方で医療や開発・産業系は、低遅延のVRライブ配信システムが重視されます。視聴する人数や、対応するデバイスも限られるでしょう。ジュエ株式会社では、リアルタイムのVRライブ配信システムに強みがあります。4~8Kにおいて、ほぼ遅延がないリアルタイムステッチに加えて、要件に応じた低遅延のさまざまなプロトコルを扱うことができます。

視聴端末に関しても、大型スクリーン、マルチスクリーン、タッチパネル、カスタマイズしたHMD等のさまざまな端末で表示することができます。産業用途に最適な低遅延VRライブ配信システムを提供しています。要件に応じてさまざまな構成を提案できますのでお気軽にご相談ください。

 

2020年VRライブ配信の始め方ガイドまとめ

・まずはコンシューマ向けのVRカメラでYoutubeライブ配信等をしてみよう。体験重要。
・必要なVR映像は、360°か180°か2Dか3Dなのかを考えよう。
・予算に応じて、4K30fps~8K60fpsを選択しよう。
・VRライブ配信の視聴方法や運営目的を考えよう。
・配信サーバやアプリ開発が難しいなら、各社のVR配信サービスを利用。デメリットも理解しよう。
・配信サーバやアプリ開発が出来るなら、独自のVRライブ配信システムの構築可能。
・一体型VRカメラのデメリット。自由度があがる汎用VRシステムは予算も上がる傾向。
・遅延(30秒~60秒等)が許容できるなら従来の方式通りのVRライブ配信。
・産業系などで遅延を1秒以下に抑えたい場合は、低遅延VRライブ配信が必要。

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