最終更新日 2025年11月27日
ジュエ株式会社は、VRおよびイマーシブ映像向けのカメラ開発とシステム開発を手がけています。今回は、LEDドームや巨大LEDウォールなどのスクリーンベースのイマーシブ環境を想定し、超広視野角かつ超高解像度(VR換算12K〜16K)のプレビューシステムについて技術実証と性能検証を行いました。HMDを用いず、ワイドモニター上でドラッグ操作により視野方向を自由に切り替えながら直感的に視聴できる構成とし、同一ネットワーク内の複数端末から同時アクセスした場合でも、映像遅延が概ね1秒前後に収まることを確認しています。
本システムは、従来の360°VR映像にありがちな「解像度は高いはずなのに、視野当たりの画素密度が不足して細部が粗く見える」という課題を解消することを狙いとしています。VR換算12K〜16K相当の超高精細映像を180°以上の広い視野角でリアルタイムに配信することで、被写体の細部までクリアに確認でき、複数の関係者が同じ映像を同時に共有しながら評価・検証を行えるのが特長です。HMDを装着せずに、通常のモニター環境のままイマーシブ品質に近いビューイング体験を実現できる点も、昨今のスクリーンベースのイマーシブトレンドに適合しています。
検証では、8Kセンサーと広視野角レンズを組み合わせたカメラを用い、医療・教育現場を想定してテーブル上に各種小物やチャートを配置し、2560×1080ピクセルのワイドモニターからローカルLAN経由でリアルタイム視聴を行いました。その結果、フラットケーブルの配線は一本一本を明確に識別でき、細かな印字文字も問題なく判読可能であり、カラーチャートの目盛については1mm単位まで視認できることを確認しています。横方向に180°以上の視野を一望しながら、従来の一般的な360°カメラでは確認が難しいレベルの細部まで追い込めることが実証されたかたちです。
・検証環境
カメラ/レンズ: 8 Kセンサー+広視野角レンズ
被写体: 医療・教育現場を想定し、テーブル上に各種小物・チャートを配置
視聴端末: 2560 × 1080 pxワイドモニター
通信: ローカルLAN
・検証結果
観察対象 解像度感
フラットケーブルの配線 一本一本を識別可能
細かい印字文字 判読に十分
カラーチャート目盛 1 mm単位まで視認
システム構成はシンプルで、一般的なLAN環境に接続したPCのみで運用できるため、医療・教育をはじめとした現場への導入ハードルも低く抑えられます。今回の検証はローカルLANでの運用を前提としていますが、今後は拠点間ネットワークでの活用や、既存の配信・収録システムとの連携、さらにはHMDを併用したハイブリッドなイマーシブ環境への展開など、用途に応じたカスタマイズも可能です。テスト運用や個別案件向けの調整を含めて、ご要望に応じたご提案を行いますので、お気軽にお問い合わせください。
超高解像度(VR換算12K〜16K)のプレビューシステムの技術実証及び性能検証を実施
手前に広視野角レンズを装着したカメラを設置し、医療現場や教育現場での利用シーンを想定して、机上にさまざまな小物やチャートを配置しました。この構成でどこまで細部が見え、どのレベルまで解像して確認できるのかを検証しています。

カメラからの映像は8K解像度で取得しており、水平視野角は220°です。VR向けにエクイレクタングラー展開した場合、220°は 360/220×8K≒約12.6Kに相当します。たとえばレンズを180°の視野角に変更すると、360/180×8K=約16Kとなり、同一システム構成のままレンズ交換だけで16KクラスのVR換算解像度に対応できます。
VR表示(360°空間を2Dカメラで自由に見回しているような映像表現)を行うには、エクイレクタングラー形式への変換が必要になります。そのため実務上は、レンズの視野角を加味した「VR換算解像度」で表現するケースが多くなります。本システムでは元の映像は8Kですが、レンズ視野角を含めて換算すると、約12Kクラスの解像度として取り扱うことができます。

こちらがリアルタイムプレビューのイメージです。8K映像を正しくVRフォーマットで表示するためには、レンズの視野角に応じた余白(黒帯)部分も含めてレンダリングする必要があり、その領域も一体として扱うことで、正確な視野と歪み補正を維持しています。

この超高解像度環境において、実際にどの程度のディテール再現性と解像度感が得られるのかを定量的かつ視覚的に確認することが、本検証の主な目的となります。

同一ネットワーク上の各端末からは、2560×1080ピクセルのワイドモニターを用いてリアルタイム視聴を行います。複数のシステムで同じ映像ストリームを受信し、マウス操作によってVR表示の視点を自由に切り替えながら、遅延や操作感も含めて評価できる構成としています。

以下に示すのはモニター上のスクリーンショットであり、実際には画像をクリックすることで、収録時の解像度に近い状態で細部まで確認できるようになっています。
視野を横方向に振っていくと、180°を超える広い視野角を一望でき、オペレーターの前方に広がるテーブル全体を視界に収めることができます。実際の画面では、画像をクリックすることでオリジナル解像度に近い状態でご覧いただけます。
ここからは、どの程度まで細部が見えるのかを順に追っていきます。従来の一般的な360°カメラでは判読が難しくなるような微細な情報が、どのレベルまで再現されているかを評価するイメージです。画面のキャプチャは、クリックすることで実際の解像度に近い状態で確認できます。
カメラのケーブル付近を拡大すると、フラットケーブルの配線1本1本をはっきりと識別できます。肉眼で覗き込んだ場合に近い感覚で配線状態を確認できるレベルの解像度であることがわかります。拡大表示は、クリックにより実際の解像度で確認できます。
手前に配置した細かな印字文字についても、無理なく読み取れる視認性が得られています。説明書やラベルなど、文字情報の多い被写体の確認にも十分な解像度であることが確認できます。こちらもクリックすることで実際の解像度をご覧いただけます。
カラーチャートの目盛部分に注目すると、1mm単位のスケールまで明確に識別できます。つまり、卓上の情報を1mmレベルの精度で観察できる視認性が確保されているということになります。
以上の検証結果から、本システムが超広視野角かつ超高解像度の環境においても、十分なディテール再現性を持つことが技術実証および性能検証によって裏付けられました。実際の動作イメージは動画でもご覧いただけ、ネットワーク内の任意のシステムから、同じ超広視野・高解像度映像を自由に呼び出して視聴できることを確認しています。
本システムは、従来の360°VR映像で課題となっていた「高解像度で撮影しているにもかかわらず、視野当たりの画素密度が不足し、どうしても画質が粗く感じられてしまう」という問題を解決することを目標に設計されています。VR換算12K〜16Kクラスの超高精細映像を、180°以上の広い視野角でリアルタイムに配信し、HMDを使わずにドラッグ操作だけで自由な方向を見回しながら、細部までクリアな映像を複数人で共有できる点が大きな特長です。
VR/イマーシブ向けのカメラおよびシステム開発に関してお気軽にご相談ください。

























